仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 それってどうなの

続けて手にしました。『それってどうなの主義』(斎藤美奈子=著、白水社=07/2刊)読了。
前作『たまには時事ネタ』(中央公論新社=07/1刊。当ブログ3/7付参照)から間を置かずの刊行です。両書を比べると『たま時事』は1誌の連載だけを時系列に編集しているのに対し、新著は各種の新聞雑誌に掲載されたものをテーマごとに再構成。前書はクロニクル的な面白さがあり、これはこれで貴重なものの、1テーマ1話読み切りという贅沢なこだわりがともすれば目まぐるしく、その先が読みたいという欲求を覚えたりもしました。そこへ登場したこの『それって』は、同テーマの変奏がふんだんに盛り込まれていて、あらためて満足しました。
とりわけ大修館書店の月刊「言語」誌に連載のシリーズが、時宜的な言葉尻を捉えて鮮やか。「拉致と連行」「保守と革新」「戦前と戦後」の各項など、ニュースの見方が180度変わってしまいそうです。同シリーズの「左右の安全をたしかめて」(朝日新聞の社説を考察)と「バイト語とオフィス語」(ご注文のほうは以上でよろしかったでしょうかのたぐいを分析)の項あたりが本書の真骨頂ではないかと思います。
ほかに変わり種としては、なぜか妙に力の入っている一連の昆虫ネタ。それとご出身地・新潟日報の連載はどこか身内ムードながら、全くゆるみがないのはさすが。
なお、当ブログの趣旨とまったく関係ないだろ、と言われる前に、同書には「巨大仏の身長」という1編があることを記しておきます。
抜粋して心に刻んでおきたいフレーズは山ほどあるのですが、挙げればきりがないので、前書きの一節を。

「それってどうなの主義」とは、何か変だなあと思ったときに、とりあえず、「それってどうなの」とつぶやいてみる。ただそれだけの主義です。(略)すなわち、違和感を違和感のまま呑み込まず、外に向かって内に向かって表明する主義。言い出しにくい雰囲気に風穴を開け、小さな変革を期待する主義のことなのです。「それってどうなの」に大声は似合いません。小さな声でぼそぼそと、が効果的。ではみなさん、小さな声で唱和してみましょう。それってどうなの?

いいぞいいぞ!