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 宋元仏画を見た

神奈川県立歴史博物館の特別展「宋元仏画」を見てきました(11/25まで開催中)。
メイド・イン・チャイナの輸入仏画を中心とする企画展。一見さほど珍しく見えないのは、日頃目にする日本の仏画がこれらを手本に真似たものであるから。時代と照らし合わせると宋・元は日本の平安・鎌倉期、ですので学術的にたいへん貴重な品々です。
仏画は仏教の「数」と相性がいい。十六羅漢とか、十王とか、六道とか、何幅かでワンセットになっていて、各幅の構図にちょっとずつ工夫を加えるのが絵師の腕の見せ所なのでしょう。
当展ではとりわけ十六羅漢図が充実(清涼寺蔵ほか複数展示)。もともと規範がゆるやかなモチーフだからバリエーションが多いのだとか。ポーズも顔つきも独創的で見飽きません。
解説文で得た知識を記しておくと、宋元画のいくつかの作例がのちに日本の羅漢画の表現方法の違いを生み出してゆきます。その様式は禅月大師貫休による禅月様(よう)、張玄羅漢=李龍眠様、蔡山羅漢など。こうしたアカデミックな見方も現物で教えてくれる親切な展示です。
さて、ほかに会場のなかで目を引いたのが、六道図(新知恩院蔵)。この説明文に〈人道幅には水陸会の創始者である梁の武帝と宝誌和尚を描く〉。宝誌和尚!と聞いて思わず、西往寺・宝誌和尚立像の縦に裂けたご尊顔を画の中に探しましたが、描かれていたのはふつうのお顔でした。
年代物の仏画はたいてい彩色が褪せて地が焼けて、目を凝らさないとよく見えない。今回の展示品もその例に漏れませんが、それでも目が慣れるまでじっと待つテンポが身についてくるにつれて、がぜん面白くなってきます。
会場の最後に、仏画修復の様子を写真で解説したコーナーがありました。絵画の保存の難しさを思い知らされるとともに、この会場の出陳品が今日までよく残ったものだと感動せずにはいられません。

(追記:会期中展示替えがあり、上記の六道図の展覧は終了しています)