仏報ウォッチリスト

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 薬師寺展を見た

東京国立博物館の特別展「国宝 薬師寺展」を見ました。すごいなこりゃ。
出品数は目録の番号で数えると全47点。たったこれだけで大会場を満たしてしまうんだから、いかに各品のグレードが高いかがわかります。
メインはなんたって金堂の日光・月光菩薩立像でしょう。こんなに大きかったかと驚きました。脇侍として立っていると両像を鏡像コピーみたいに寸分変わらぬ容貌と考えがちですが、こうしてお並びになるとずいぶん違う。たとえば側面から見た胴体の厚みとか。
展示の仕方に工夫があります。足下から360度ぐるっと見上げられると同時に、正面に一段高いバルコニーを設えて、菩薩の目と同じ高さから対面できるのです。ここはなかなか去りがたいなあ。仕切りの手すりに「ものをおかないでください」みたいな注意書きがありまして、これってきっと、荷物を置いて落下すると危ないからっていう意味ではなくて、ここにお供物を奉納しないで、という婉曲なお断りだと思うわ。おもわずそうしたくなるもの。
同像の感想を語り出すときりがないのでこのくらいにして、ともすれば見逃しそうなオススメが、同じフロアにある聖観音菩薩立像です。人体とほぼ同じ大きさで優しげ、作為のない造作が親しみ深い。メイン像に向かうスロープの途中で、はやる気持ちを押さえて、ぜひ横顔を拝んでください。
あと印象的だったのは慈恩大師像。の指の組み方。無意識のうちにアレをやる癖がついてしまって困ってます。
それから、同展図録の表紙がとぼけててイイ。上製の厚紙に直接、灰緑色のぼんやりした薬師寺遠景写真のみ。タイトル文字はエンボス加工なものの、まるでカバー紙を忘れたのかと思わせる地味な体裁です。店頭に並べる書籍だったらありえないこのこだわりに拍手。