仏報ウォッチリスト

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 曼荼羅展を見た

神奈川県立金沢文庫で、特別展『曼荼羅 つどうほとけたち』(5/25まで)を見ました。
ひとくちに曼荼羅と言っても、この言葉が指し示す範囲は広く、辞書の説明を読んでも全貌は捉えきれません。ですからこういう企画は大変ありがたく思います。
数年前に各地を巡回した国立民族学博物館主催の『マンダラ展』は、アジアのきらびやかな儀礼装置という印象が強いものでした。いっぽう今回は、主催する金沢文庫真言律宗称名寺に付帯する施設という性格上、空海が請来し日本国内で発展した図版が中心。我々が曼荼羅と聞いてまず思い浮かべるような古びた色の掛け軸を、同寺や周辺の真言寺院などから集めて展示しています。カタカナのマンダラはもう何でもありの自在なイメージ、それに引きかえ我が国の曼荼羅は当初の形式をかたくなに守る律儀さが信条と言えましょうか。
メインは横浜市弘明寺の「両界曼荼羅」。この約4メートル四方のビッグサイズが、空海によって伝えられた本来の大きさなのだとか(これがいわゆる原図曼荼羅)。紺地に金泥の繊細な描写を見上げて思わずため息。
階上の部屋には、各種の目的に応じた曼荼羅を展示。いろいろあるなあとひと通り眺めて、会場出口を出ますと、そこに「おさらい」コーナーがありました。学芸員さんの手書きらしい簡潔な説明文がイラスト付きで10枚、これがツボを押さえていて秀逸。あ、そうか!とまた展示に引き返し納得しました。心にくい演出です。
なお、当展のもう一つの目玉が、同じく弘明寺の「十一面観音立像」。平安時代の鉈彫りの代表作で、昨年の東博『仏像』展にもお出ましでした。そもそも曼荼羅とは直接関係ないのですけど、「両界曼荼羅」をエスコートして来ちゃいました、みたいなたたずまいが微笑ましいです。