仏報ウォッチリスト

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 昭和大納経を見た

大倉集古館で「東大寺御宝 昭和大納経展」を見ました(7/21まで開催)。
30年前に東大寺大仏殿昭和大修理を記念して写経奉納された「大方廣佛華厳経六十巻」の再公開。当時のことは存じ上げなかったのですが、展示資料を見ますと、書道界を挙げての大イベントだったようです。書写をしたのが書家522名、見返し絵を描いたのは画家68名。料紙は特別に漉かれ、経篋は鎌倉時代の用材で制作。その資金は全国の書道にかかわる人が華厳唯心偈を揮毫する「百万人署名運動(一口百円)」で150万人分を集めたといわれます。
この経巻を館内の展示ケースすべてを使って部分ごとに展示。専門の写経僧が癖を消し去って書く字ではなく、現代書家が個性もそのままに書き継いでおり、書き手が替わるとリズムが変わる、それが心地よく感じられます。
そうそう、古写経というのは経年のため朽ちた色合いになっているのかと思っていたのですが、この新しい経典の紙も同じ色をしています。会場の解説文によればこれは「雁皮に黄蘗染の和紙」だそうです。黄蘗(きはだ)はミカン科の落葉喬木で、樹皮を染料に使うと防虫効果があるといいます。わざわざあの色にしていたというのは軽い衝撃でした。