仏報ウォッチリスト

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 鎌倉の精華を見た

鎌倉国宝館で特別展『鎌倉の精華』(11/24まで)を見ました。展示品はさほど多くないのですが、開館80周年記念として気合い十分。
今回は〈設立の原点を振り返るべく、開館当時の展示風景を再現する〉というのがテーマの一つ。80年前を知る人なんてごくわずかなのに懐古してどうするの、と思いきや、これが意外なことを教えてくれます。
80年前といえば昭和3年。当館は〈関東大震災によって鎌倉の多くの文化財が甚大な被害を受けたことを教訓に、そうした不時の災害から文化財を守ることを目的に設立〉されました。今回の展示には、開館当時に寄託され、しばらくして元の寺に戻った宝物が多数あるそうです。返還されたというのは、寺側で管理できる余裕ができたということでしょう。
もっとも、戻された経緯はさまざまあるようで、会場中央にまします宝城坊(日向薬師薬師如来坐像は、〈村で疫病が流行したため、昭和10年に寺へ返却された〉という理由が当時の新聞記事付きで紹介されています。昭和史の一端を垣間見る思いがします。
絵画・書跡も優品が多数。なかでも鎌倉ゆかりの蘭渓道隆墨蹟にしびれました。直筆の「金剛般若経」は〈円覚寺第152世・景初周随が秘蔵していた〉品だそう。「法語規則」は冒頭で〈鞭の影を見て後に行くは良馬に非ず。訓示を待ちて志を発するは実に好僧に非ず。……〉と修行者を叱咤しています。
会場内には何だか仏様たちが80年ぶりの再会を喜んでいるような華やぎがあって、居心地よい空間でした。