出光美術館で「近代日本の巨匠たち」展を見ました。正確に言うと、同展に併設の「仙がい展」(※「がい」は崖の上の山のない漢字)を見に。
会期が10/26までなのでギリギリ。それを今さら紹介しても、と忸怩たる思いながら、記録ということでなにぶんご容赦を。
今年の「仙がい展」の出品は14点。作品名と画賛の文字(展示キャプションより。濁点を加えるなど適当に補足しました)は次の通り。
- 布袋画賛
「夜もすがら生死涅槃を見し夢はいかに仏に魘(「おそわ」もしくは「うなさ」)れにけり」 - 指月布袋画賛
「あの月がほしくばやろふ取(り)て行(け)」 - 指月布袋画賛
「あの月が落(ち)たらおれが拾ひます」 - 一円相(仲秋名月)画賛
「大虚(「おおぞら」か?)になげて捨(て)たる影見れば思い切(り)たる秋の夜の月」 - 一円相画賛
「仏会人生称八萬(以下略)」 - 絶筆碑画賛
「墨染めの袖の湊に筆すてて書きにし愧(「はじ」)をさらす浪風」 - 秋月画賛
「目を推せば二つ出て来る秋の月」 - 月兎画賛
「逢月懐胎」 - 中秋名月画賛
「一輪明月掛中秋」 - 菊画賛
「此の花を菊とはいへど耳もなし葉は有りとても飲食はせず」 - 菊画賛
「そしるなよ庭のあたりに菊の花」 - 老人六歌仙画賛
「しわがよるほ黒が出ける(以下略)」 - 染井紅葉画賛
「秋風は染井の紅葉吹(き)かけて怡土志摩の錦なりけり」 - 西都府懐古画賛
「収稲田露湿衣秋(以下略)」
老人六歌仙画賛はおなじみの作品と別バージョン。何枚も描いた題材らしい。見慣れたやつではいつも、後ろ向きの老人の背から蔓が伸びている奇妙な姿(たぶん画賛にある孫の手を使う様子)に目が奪われていました。今回の作品にも後ろ向きの人がいて、その背には本物の孫を負っています。あるいは賛の「子を誉める」かな。
布袋画賛の1枚目は布袋さんが仰向けであくびをしているポーズ。早書きなのに確かな描写。ぐーーっと伸びをしたとき投げ出した足の先に力が入り指がかかとに向けて曲がっている、思わずそうそうと頷きました。
指月布袋の指差す先に一円相が飾ってあるという凝った展示レイアウトでした。