先日、東京国立博物館で特別展「大琳派展 継承と変奏」を見ました。ぼやぼやしているうちに次々と展示替えがなされているようで、書き込みにためらいを感じてきましたが、いそぎ覚え書きをしておきます。
当展に登場するのは本阿弥光悦・俵屋宗達、尾形光琳・尾形乾山、酒井抱一・鈴木其一の3世代6人。これが琳派の系譜、とはいえ実際は各世代間に百年の開きがあるので直接の手ほどきがあったわけではありません。そんなあやふやなつながりが果たして師弟関係と呼べるのか、という素朴な疑問に真正面から答える好企画。
先師にどこまで迫れるか、という研鑽の結晶が模写です。ひたむきな敬慕が心を打ちます。こういう姿勢はジャンルを問わずありえることでしょう。そう考えるとサブタイトルの「継承と変奏」がずしりと響いてきます。
以下に、仏教に関連する作品をいくつか、図録など引用しながらメモします。
- 宗達「唐獅子図・波に犀図杉戸」「白象図・唐獅子図杉戸」
京都・養源院蔵。1面に1匹ずつ霊獣が大胆な構図で描かれています。戸板の表裏を鑑賞できる展示が親切。
- 宗達「西行法師行状絵」
西行の旅を描いた絵巻は何種かあり、そのうち当品は釆女本という系統に属しますが、原本はすでに失われているので貴重な転写。一時は裁断されて散逸し、出光美術館が全四巻中三巻分を再収集したのだそうです。
- 宗達「龍樹図」
蓮華に乗る細面の龍樹菩薩。絵柄は中国の『仙仏奇踪』からの借用だといいます。
- 光琳「小西家旧蔵光琳関係資料のうち北野天神縁起絵巻写」
琳派の名の由来となった尾形光琳は本展の中心、ですが残念ながらこの人の出陳品は宗教色が薄い。せっかくですから神仏つながりで本品をチョイス。墨一色のこの模写がなぜ重要なのかというと、一連の風神雷神図の元ネタだから。つまり光琳は宗達の風神雷神をそっくり写したのですが、一方でこうして原典の研究にも余念がなかったわけです。