仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 三井寺展を見た

先日、サントリー美術館で「国宝 三井寺展」(3/15まで)を見ました。
いや宝物があるわあるわ。建物以外みんな持ってきたのかと思うほど。仏像だけでも、目玉の不動明王はいうにおよばず、変化観音各種、神像、毘沙門、吉祥天、蔵王権現、さらには円空仏まである。
どうしてこんなにバラエティに富んでいるのか。その理由の一つは、三井寺の歩みのなかで付加された要素が多いこと。
創建は白鳳時代/円珍が天台別院として中興/入唐した円珍が密教を請来/比叡山と対立/代々の住職が熊野三山検校として修験道を統括/西国三十三所第十四番札所/近江八景……
などなど。これほど骨組みの複雑なお寺も珍しいです。
もう一つの理由は、円珍には神仏が「見えてしまう」ため。
幼少時に見た訶梨帝母/入唐求法をすすめた山王明神/修行中に感得した黄不動/帰国の船中に現れた新羅明神……
そうした神仏を同寺では丁重にお祀りしてきました。どうして見えてしまうのかというと、円珍は重瞳であったらしい。
当展では、智証大師円珍その人に関する資料も豊富。円珍展と呼んでもいいくらい。おかげで日本仏教史上における円珍の重要性が良く分かりました。偉業とともに心に刻まれたのは、坐像の風貌。とりわけ、とんがった頭頂。かぶりものをしている維摩居士像も、円珍にあやかって頭が盛り上がっています。
なお、書状での「円珍」の漢字表記は、「円」が口の中にたてにム+貝、「珍」が王へんに尓でした。


追記1;
関連資料を探していて気づいたこと。古い雑誌で恐縮ですが、『芸術新潮』1990年1月号「国宝」特集のなかの国宝大百科という章に「秘中の秘」と題して三井寺の宝物(御骨大師、五部心観、不動明王像)を見開きで紹介しています。二百数十ページの誌面で冒頭の8-9ページに位置するほど貴重な宝物だということです。ところで、この国宝特集がそのまま『国宝 (とんぼの本)』として出版されているのですが、同書にはなぜか三井寺のページだけないのです。秘仏掲載に「待った」がかかったのでしょうか。


追記2;
会期後半に入った今日25日から展示替えで秘仏がフルに揃います。さぞ混むでしょうね。私が訪問したのは先週でした。