このほどお写経を始めました。べつに何か願をかけているわけではありません。仕事柄、経典を開く機会は少なくないのですが、いつも部分的なフレーズをチェックするばかりで、全貌を味わうチャンスがない。こんな有様では例えば『法華経』冒頭の「序品」など一生知る由もないと危機感をいだき、そうだ！いっそ全文を書き写す作業を自分に課せば――と思い至ったのが今回取り組むきっかけです。
人前に出す代物ではないので、作法など何もありません。道具は小筆と墨汁と半紙。手本は岩波文庫の明朝活字。レイアウトはタテ組とだけ決めてあとは成り行き。紙の出だしと終わりで文字サイズや行間がだいぶ異なっていて、わが集中力のなさにあきれます。それでもやっぱり黙読よりは身に付く気がしています。今のところは。
所期の目的を果たすだけならコンピュータ入力だってかまわないのです。でも、表外字をどう扱うかが厄介なので諦めました。筆書きの良いところは、画数の多い漢字など適当にぐにゃぐにゃっと書いてごまかせること。そんなブロークン書体のいいかげんなお写経です。
で、まずは『法華経』を順に書くつもり。終わったら次は『無量寿経』。それから……いや、あんまり欲張らないようにしましょう。なにしろ、こんなに進まないもんだとは思いもしませんでした。休日の空き時間に相当がんばったものの、まだ「序品」も済みません。うわあ、これではいつ終わることやら。
