仏報ウォッチリスト

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 伊勢神宮展を見た

東京国立博物館の平成館で特別展「伊勢神宮と神々の美術」を見ました(9/6まで開催)。2013年の第62回式年遷宮(社殿等を20年に1度造り替える祭典)を記念し、神宝や史料など100点あまりを陳列。〈なにごとのおはしますかは〉しらないものを見せてしまおうというある意味で大胆な企画です。
この展示を前にすると、当ブログが従来おこなっている、仏教関係の事物だけを抽出するという手法がまったく無意味に思えてきます。なにせ仏教と神道とは長いこと並立共存してきて、お寺と神社がハッキリ分離したのは明治の廃仏毀釈以後にすぎないわけですから。
本展出陳品でボーダーレスの例を挙げますと、東大寺の重源が大仏殿復興祈願を目的として伊勢神宮に参詣したことを記す絵巻がある。あるいは、叡尊もまた伊勢に三度行った記録があるという。その叡尊がいた西大寺には、伊勢の内宮・外宮を胎蔵界金剛界とした曼荼羅が伝えられている。さらに、伊勢の神官が造ったという銘の入った仏像や経塚が現存する、といった具合です。
さて、展示品でもっとも衝撃的だったのは、ぼろぼろに錆びた刀剣類。15世紀に奉納された後、長らく土中にあって明治初期に掘り出された物だといいます。

  • 〈神宮ではかつて、撤下(ルビてっか。役目を終え神前から下げられた)御装束神宝を人の目や手に触れるのが畏れ多いとして火に投じたり土に埋めたりしていた。これらの中で、宮域内で発掘されたものや、偶然伝世してきたものを古神宝類と称する。〉(当展図録より)

式年遷宮という行事の意味をこれほど如実に示してくれる品はないではありませんか。宝物というのは素材も大事だし製造技法も大事、でも何より大事なのは、「今これが宝だ」という定義付けなわけです。