仏報ウォッチリスト

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 お土砂を見た

先日、歌舞伎座九月大歌舞伎」夜の部を見ました。日が経ってしまい、急ぎ必要事項のメモだけしておきます。
おそらくラインアップの目玉は「勧進帳」。ところがキャストの豪華さが逆にバランス悪く思えて、なんだか今ひとつ。
個人的に楽しみだったのが「お土砂」。これだけバカバカしい演目も珍しいです。原作は福森九助。腹を抱えて笑った前回は気にも留めなかった筋立てが、思いのほか込み入っていることが今回わかりました。
ところは駒込吉祥院(きっしょういん)。正面奥に仏壇があり、中央に立像を安置。3階席からだと金色のお足元しか見えず像容不明。源範頼率いる木曽の軍勢が江戸に攻めて来る(どういう時代設定だ?)というので、町の者たちがこの寺院内に避難しています。
そのなかの一人が、美しすぎる町娘・八百屋お七。左甚五郎作の欄間の天女像にそっくりで、その彫り物を外して代わりに佇むと誰も気づかないほど。お七は恋する相手とは結ばれず、意に添わぬ者との縁談が進みます。本命の男には紛失した刀の詮議をするという役目があり、その鍵を許婚者が握っているらしい。お七の切なさに一肌脱ぐ紅長(べんちょう)という無責任男が巻き起こす騒動が前半。
お寺が避難場所として使われていること、そして住職や小僧さんが避難者のプライバシーを必死に守ろうとしていることが好印象。
後半はお七が恋人逢いたさに火事と偽って木戸を開けさせ、どこからともなく出てきた詮議の刀を抱えて走り出す。この場面からは江戸の町のセキュリティの確かさを思い知らされます。
とまあ、そんな筋書きはやはりどうでもよくて、役者の魅力で引っ張る演目。こんなたわいもない見せ物を大舞台で1カ月もやっているおおらかさが好きです。