仏報ウォッチリスト

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 「紅葉狩」を見た

国立能楽堂お能「紅葉狩(もみじがり)」を見ました。平安中期の武将・平維茂(これもち)による鬼退治の話。戸隠で酒宴をする女たちに引き込まれ、酔い臥してしまう維茂。八幡大菩薩に仕える武内の神が夢に現れ、女は実は鬼神と告げ、神剣を授ける……。
能作品としては意外にケレン味たっぷりで、なるほどこれが歌舞伎でももてはやされる演目であることが納得できます。
僧侶は出てきません。が維茂は、酔わされてつい、と仏教の五戒に託して反省します。
地謡:されば仏も戒めの、道は様々多けれど、殊に飲酒を破りなば、邪淫妄語も諸共に、乱れ心の花鬘……
 ワキ:あら浅ましや我ながら、無明の酒の酔ひ心……〉
すべて酒のせいと言い訳しているものの、じつは女の色香に迷ったからでしょう。
とすると、この演目の狙いは維茂の強さを誇示するのが目的ではないような気がします。かといって鬼神もあえなく退散するし、武内の神にいたっては自分の手でなぜ仕留めようとしないのかと思う。いったい焦点はどこにあるのでしょうか?