仏報ウォッチリスト

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 奈良の古寺と仏像展

三井記念美術館で特別展「奈良の古寺と仏像」を見ました。
全国3会場の巡回展なのですが、注意すべき点があります。本展は〈各会場が個性を発揮した三部作〉という認識が主催者側にあること(図録・序)。すなわち3会場はまったく性格が違う。新潟展は會津八一の故郷として同氏の書を中心としながら、新潟地震のお見舞いを込めた中宮寺菩薩半跏像の展示が目玉(終了)。東京展は仏像中心(開催中)。奈良展は拓影や瓦、會津の書などで、注目は法隆寺金堂壁画模写(11月開催)。
というように同じ展名を冠しながらも、その性格はずいぶん違う。そこで、本会場で力を入れている仏像に注目。解説文も造像技術に関わる記述がやたら詳しいので、やはりそこを見てほしいのでしょう。
冒頭の部屋には小金銅仏と押出仏。優品多数。とくに東大寺菩薩半跏像と法隆寺厨子入押出阿弥陀三尊に心打たれました。
メイン展示室はお寺ごとに配列。背景を緑と朱で色分けしているのが斬新で仏像をよく引き立たせてくれます。どれか一つといわれたら、長谷寺の金銅十一面観音立像、の光背。
夢違観音は私にとって別格の存在、話すと長くなりそうですからコメントは控えます。ただ、このガラスケースの奥行きは立体像を納めるには手狭かな。照明がうまく行き届いていない作品も散見。
付帯セクションでは、常設の茶室に會津八一の諸作品。それと仏具を集めた部屋もいい。曼荼羅図、舎利塔、天蓋天人をただ通り過ぎてしまうのはもったいないです。
というわけで、副題の「會津八一のうたにのせて」にのせられて訪れた者としては戸惑いを隠せなかったものの、視点を変えれば出陳品のレベルがかなり高く、決して損はしない内容。「三部作」の全貌は、充実した図録でご確認ください。