仏報ウォッチリスト

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 「仙がい」展を見た

出光美術館で「生誕260年 仙がい 禅とユーモア」を見ました。(「がい」は崖の山のない漢字。Web上で書けないため、かな表記します)
毎年秋に趣向を替えて開かれる定番企画ながら、今年は節目の大回顧展(ちなみに前回の大規模展は2007年の没後170年記念展でした)。書画と遺愛の品あわせて約100点。これらすべてが同館所蔵品というのだから驚きです。
仙がいの生涯をたどりながら思想の解明にまで踏み込む内容。よく練られた構成で、とにかく順路通りに進んでゆけばその意図を汲みとることができます。
副題の「禅とユーモア」のうち、ユーモアは作品と対面するだけでおのずと伝わってきます。特筆すべきはもう一方の禅思想が丁寧に解説されていること。作品に描かれた歴代の禅者(馬祖、臨済、徳山)、公案(狗子仏性、南泉斬猫、香厳撃竹)、禅語などを説明した短文が逐一添えられています。まず作品を見てクスッと笑ったあと解説を読み、再び作品に目を戻すとその書画がガラッと変わって見える。これは仙がい作品展ならではの体験です。
この禅の世界をたどるまでが最初の部屋。鋭い一行書が8点並ぶ展示ケースに圧倒されました。
次の部屋には釈尊、達磨、阿弥陀如来観音菩薩ときて、お得意の布袋の絵がズラリ12点。まるでお寺の本堂にでもいる気分。
3つ目の部屋は、冒頭に「愉快な仲間たち」のコーナー。心底慕われていた様子が伝わってきます。ここからは、おなじみの作品がこれでもかと並びます。龍虎、花見、蘆、頭蓋骨、切縄、堪忍柳、さじかげん、老人六歌仙、そして亡くなる年に書かれた牡丹まで。個人的にはひねりのきいた韓信股潜と寒山拾得が印象的でした。
ひととおり観たあとで、担当学芸員による列品解説を拝聴。このお話が秀逸です。人気作品ベスト5の紹介や、有名な「○△□」の大胆な解釈、布袋画賛の意味深長な言葉書きなど、納得の30分強。あまり言うとネタバレになりますので、あとまだ4回予定されている解説をぜひ直接お聞きください。
ユーモアにひきつけられているうち、いつしか禅の教えが身にしみこんでいる。仙がいさんの紙上説法は今なお有効なようです。