仏報ウォッチリスト

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 高僧と袈裟を見た

京都国立博物館で特別展覧会「高僧と袈裟 ころもを伝え こころを繋ぐ」を見ました。
布地の織りや染めの歴史をさぐるには、お寺に伝わる高僧の袈裟が第一級の資料だといいます。なぜなら着用者の名前が特定できて、宝物として丁寧に保存されてきたから。まずこういう分野の研究が行われていることを知って驚くとともに、このこだわりの展覧会に漕ぎ着けたのはきっと研究者冥利に尽きるだろうなと思いました。
仏教のおしえに従う者としては、弘法大師が師匠から譲り受けた、あるいは道元禅師が手ずから縫ったと伝えられる袈裟が目の前に広げてあるのですから、高揚を感じずにはいられません。これは図像や直筆の書画などを見るのとはまったく別の興奮。700年前の南浦紹明の肖像画に描かれている袈裟がコレです、ってすぐ後ろに現物が展示されていたりとかします。
こう言っては身も蓋もないのですけど、見た目はどれも古びた布地にすぎません。そこで裏付けのために書面や絵図が総動員されるわけですが、一緒に展示されているこの援用資料が、目を疑うほどハイレベルの品々なのです。最澄筆「空海請来目録」、知恩院蔵「法然上人絵伝」、円伊筆「一遍聖絵」などなど、こうした逸品が今回は脇役なわけです。
そういえば、肖像画を見て着物や袈裟に注目したことって、今までなかったかもしれません。色や柄など今回あらためてまじまじと拝見しました。背もたれに法被をかけるのが定型なのだそうです。
しめくくりの展示に禅僧の肖像画が3点、妙心寺の第9世、12世、17世。この3人がなんと同じ柄の袈裟をしています。つまり師の袈裟を継ぐことが伝法の証しだというわけですね。こんなふうに信仰のかたちを示してくれた展覧会は初めてでした。


なお、袈裟・衣が展示される高僧とその期間はおよそ次の通り。10/31までが前期。11/2からが後期。
■全期間:鑑真(箱入)、宇多法皇、性信法親王叡尊、大慧宗杲(→能忍)、道元、(伝)法然、無門慧開、兀庵普寧あるいは東巖慧安、楊岐方会、密庵咸傑、破庵祖先、無準師範、円爾、白雲慧暁、清拙正澄、夢窓疎石、空谷明応、絶海中津
■前 期:恵果(→空海)、南浦紹明、断橋妙倫、義天玄詔
■後 期:智ギ、湛然(→最澄)、無学祖元、無本覚心、滅宗宗興、不遷法序、春屋妙葩