仏報ウォッチリスト

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 「埼玉の古代寺院」

埼玉県立歴史と民俗の博物館で、特別展「仏教伝来 埼玉の古代寺院」を見ました。古代すなわち飛鳥・奈良・平安時代の東日本の仏教信仰を紹介する珍しい企画。江戸が栄える1000年近く前、鎌倉に幕府が開かれる500年前の地に、いったいお寺なんてあったのか、それを出土した瓦などで示す展示。紹介されるお寺のほとんどは現存せず、今や「廃寺」と呼ばれています。
タイトルには「埼玉の」とありますが、本来は「武蔵国の」というのがふさわしいでしょう。武蔵国の領域は現在の埼玉県から東京都を挟んで神奈川県横浜市まで。ところがこの範囲で当時お寺があったのは圧倒的に埼玉だったらしい。会場に掲示された寺院分布図を見ると、ほとんどが荒川の上流域にマークされています。ほか多摩川の上流に武蔵国分寺などがちらほらあるばかり。
展示は寺ごとに出土品と解説パネルを陳列。土地勘がなく地名がピンとこないため、どの展示ケースも似たように見えてしまうのが難。土の中から発掘されたものが大半を占める中で、同時代の現存品である深大寺蔵「銅造釈迦如来倚像」の存在が際立ちます。
展示中盤には僧道忠の彫像が登場。鑑真の高弟で慈光寺を創建した人。その慈光寺にある国宝「法華経一品経」を6巻展示するのが後半のハイライト。日本三大装飾経の一つ(他は「平家納経」と「久能寺経」)に数えられているものの、保存状態はあまり良くなく、金字銀字はだいぶ薄れています。
会期終了間際になってしまいましたが、訪れることができて良かったです。日本仏教史でめったに登場しない埼玉という地域を見る目が明らかに変わりました。