仏報ウォッチリスト

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 「俊寛」を見た

先日、宝生能楽堂で「俊寛」を見ました。
島流しにされた僧都が一人で島に取り残される悲劇。歌舞伎版は何度か見たことがあったのですが、お能のほうは初めて。あまりの違いにちょっと戸惑いました。
俊寛僧都の別荘で行われた反平家の謀議がばれて俊寛以下3人が九州の鬼界ヶ島に流されるという事件がありました。この史実をベースとして「平家物語」に描かれた話が、能と人形浄瑠璃でそれぞれの作品を生み、浄瑠璃版を歌舞伎が取り入れました。
それぞれの特徴については、渡辺保著『能ナビ』(マガジンハウス)に分かりやすく解説されています。ここからキーワードだけ下記に書き抜きます。

  島の状況 テーマ 俊寛の性格
平家物語 原住民がいる  政治  反骨的な変人
全くの無人島  孤独  小心な平凡人
浄瑠璃 漂流者がいる  家族  家父長の理想

能がシンプルに主人公の思いに絞って掘り下げてゆく展開は分かるのですが、当人が感情を剥き出しにするのにはビックリします。「全く舞の要素を持たない」(『古典集成』解題)のも異色。
そういえばお能の俊寛は、ほとんどお坊さんらしい面が描かれていないようです。他の2人が三熊野の神に祈っているのにも同調しないし、酒宴を催すし、不測の事態に取り乱しすぎる。これならば僧侶じゃなくてもいいような気もしますが、裏を返せば僧侶だからこそ、誰にもある「孤独」感が強調されるのかもしれません。