仏報ウォッチリスト

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 手塚治虫のブッダ展

東京国立博物館で特別展「手塚治虫のブッダ展」を見ました。
漫画『ブッダ』は主人公の生涯を時系列にたどるので、物語の要所を順にピックアップしてゆけばそのまま釈尊伝になります。原画を飾って、ホラこの絵はこの像とそっくり、という見せ方は何だか本末転倒な気がしないでもないですが、会場は若者で大盛況なので良しとしましょう。
ブッダの生涯はよく仏跡巡礼の聖地を数えて4つまたは8つにまとめられます。本展の区分はさらに細かく、「前世」「お告げ」「誕生」「結婚」「苦悩」「出家」「苦行」「悟り」「説法」「瞑想」「行脚」「涅槃」「納棺」というテーマを掲げます。ワンテーマを手塚治虫の自筆画と一つの仏像で示してゆく、軽快にみえて実は高度な企画。
展示される仏像の選択にはとくに制約がなく、ガンダーラの石彫や法隆寺献納宝物、アンコール仏など多彩。東博自前の所蔵品のみならず、大報恩寺・誕生仏立像、奈良国立博物館・出山釈迦立像、岡寺・仏涅槃像などを加えた贅沢なラインナップです。
目玉の仏像がもう一つ、深大寺・伝釈迦仏倚像。お廚子に収まっていて、開放した側面からの横顔が穏やかです。この像はなぜか上記のテーマ群からあえてはずして「ブッダの姿」という項目で紹介しています。どういう場面を表現した像なのか判断を保留したかったのでしょうか。ちなみに、わざわざ「伝」釈迦仏とことわったり、ふつう白鳳仏と紹介されるのを「飛鳥時代」と大くくりにしたりするのも、何らかの配慮を匂わせます。
平面の絵と立体の像の表現の違いを考えさせてもくれる展覧会でした。