国立能楽堂でお能「通盛(みちもり)」を見ました。
一の谷の合戦で討死した平通盛と、その後を追って入水した妻・小宰相(こざいしょう)の局が主人公。「平家物語」に材をとるものの、通盛の活躍する場面は同書にはなく、よく知られているのは奥さんとのなれそめです。舞台ではその仲睦まじさゆえに戦場にまで連れ添い、いざというときに出遅れるのを身内から責められます。
不本意な亡くなりかたをして救われない二人の霊を鎮めようと僧侶が読誦します。詞章には「法華経」からの引用がちりばめられます。
この読誦の功徳によって、戦死で修羅道に堕ちた通盛は成仏し、小宰相の局は龍女変成を遂げました。めでたしめでたし。
愛する相手に首ったけとはいっても、それにうつつをぬかすといった不埒なふるまいはなく、武将通盛のどこまでも真剣なまなざしが印象的でした。