仏報ウォッチリスト

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 「法然と親鸞」展

東京国立博物館で「法然親鸞 ゆかりの名宝」を見ました。法然上人800回忌と親鸞聖人750回忌を記念して両祖に関する作品約190件を集めた大規模な特別展です。
最初の部屋にはお二人の御影と直筆が並びます。いきなりハイライトともいえる展示に釘付け。同じスペースを割り当てるとどうしても法然上人の側が足りなくなるところを、書状を加えて補っています。熊谷直実宛の手紙が見応えあり。
つづいて絵伝その他でそれぞれの生涯を見せてゆきます。この辺りからしだいに二人の接点から離れるものの、最終章で浄土信仰を総括して各地の寺宝を展示。浄土宗と浄土真宗が全面協力し、同館の企画としては珍しく宗教色が濃い内容となっています。
ただ、法然親鸞が説いた「誰でも救われる」教えを、国宝級の文化財で示そうとするところに無理があるのも事実。二河白道を渡るのは決して易行ではないでしょうし、早来迎を望む臨終行儀が可能なのは相当な特権階級でしょう。
貴賤を問わない教えだった証拠品は、たとえば法然上人でいうと一周忌に完成した阿弥陀如来像の結縁名簿ですが、残念ながら現在修復中で出品されず。親鸞聖人の場合はご和讃という格好の作品があるのに、聖徳太子の項で紹介されるだけでした。その一方で庶民感覚からほど遠い本山ご自慢の襖絵や色紙が出てくるのは、かえって本展のねらいを薄めてしまっているように感じます。
とはいえ、法然親鸞に特化したこの展覧会が、大半の作品がある京都ではなく東京で実現したことに感謝するばかりです。