仏報ウォッチリスト

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 「大会」と「梅枝」

宝生能楽堂お能「大会(だいえ)」を見ました。なんとも奇想天外な物語。
天狗が比叡山の僧に命を助けられる→天狗が山伏姿で現れてお礼に望みを叶えてあげると申し出る→僧が霊鷲山上での釈尊の説法を見たいと望む→天狗たちが説法の場面を再現する→帝釈天が登場して天狗をたしなめる→天狗は退散し、帝釈天は帰って行く。
天狗は僧に、見せてあげるけど本気にならないでね、とあらかじめ警告しておいたのに、迫真の演技に僧は我を忘れて合掌礼拝。そこで帝釈天が止めに入り、天狗に対して調子に乗るなと鉄槌を下すわけです。
仏教徒なら思わず感極まってしまいそうな光景。経巻を持つ釈迦如来、取り囲む尊者たち。袈裟をまとってはいても、しょせん天狗は天狗。嘘はいけません。
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その前に上演されたのが「梅枝(うめがえ)」。後の演目があまりにスペクタクルだったため、こちらの印象がすっかり薄れてしまっているのですが、なんとか思い出してみますと。
夫に先立たれた女性が死後も執心に迷い、僧侶に供養を願う。僧は女人成仏を説いた法華経を読誦して回向。女は雅楽の太鼓奏者だった夫にちなみ、越天楽今様を歌い、楽を舞う。……
雅楽そのものをテーマにした珍しい曲、と解説にはあります。昔の謡の節を復元した演出なのだそうですが、その微妙な旋律についてはよく分からず。それよりも法華経功徳をストレートに打ち出した展開が圧巻です。
「……即得成仏、なに疑ひかありそ海の、深き執心を、晴らして浮かび給へや。或は若有聞法者、或は若有聞法者、無一不成仏と説き、一度、此経を聞く人、成仏せずといふ事なし……」