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 故宮博物院200選

東京国立博物館で特別展「北京故宮博物院200選」を見ました。
明・清の皇宮だった紫禁城=故宮が所蔵する名宝から選りすぐりの書画や工芸品を展示。会場は大きく二つに分かれ、第1部は中国の一級文物を中心とする逸品がずらり。門外不出の「清明上河図」(現在は複製品を展示)をはじめ、青銅器や琺瑯、刺繍など、贅を尽くした技巧にため息が出ます。分野が多岐にわたり、最高峰の1点が次々並ぶため、比較する対象がないのが難といえば難です。書跡はいくつか出揃っていて、ああ中国ではこういう整然として余白のない書き方が好まれてきたんだなあと感じます。
後半の第2部は清朝の文化を紹介する内容で、企画としてはこちらがメインといってもいい面白さです。乾隆帝の書斎「三希堂」の再現や、乾隆帝の肖像画「是一是二図」に描かれた愛玩品の現物を展示。自国の文化を愛でる皇帝の心持ちが伝わってくるようです。細密かつ長大な絵巻「康煕帝南巡図巻」は圧巻。雍正帝が農作業や釣りをしている一連の絵は、市民と共にある皇帝をアピールするものでしょうか。この流れの上にあるといってよいのが「乾隆帝文殊菩薩画像」です。
同展では「清朝の宗教」という一章を設けて、とくにチベット仏教との関連を紹介しています。図録の解説によれば、〈現在、数万にものぼる大量のチベット仏教関連遺品が北京・故宮博物院に伝存しているのは、明・清時代の宮廷における篤い信仰の結実であると同時に、近隣諸国からなされた大量の朝貢の結果でもある〉といい、この乾隆帝が菩薩に扮する画像は、〈チベットとの融和を図る清朝と、清朝の庇護を期待するチベット側との思惑が一致したところに生まれた特異な作例〉だそうです。決して本人が意図したコスプレではなく、そこには深い裏事情があるわけで、現在のチベット事情を重ね合わせて複雑な思いに駆られました。