仏報ウォッチリスト

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 展覧会「法隆寺展」

日本橋高島屋で「聖徳太子1390年御遠忌記念 法隆寺展」を見ました。
法隆寺の宝物約130点。デパートの催しなので重要文化財などはないものの、目を引く品々を広く集めています。円空仏とか鍋島色絵皿とか、こんなものまで持っているのかと感心しきり。太子像が並ぶあと唐突に大師像が出てくるのはシャレなのでしょうか。
飛鳥時代の織物である幡足の断片は、照明の具合が良くて綾模様がよく見えました。複製の玉虫厨子は透かし彫りの奥で玉虫の羽根がキラキラ光っていてちょっと感動。
ただ、こういう会場の常として来場者の関心にムラがあり、足早に駆け抜けて行く人が多く見うけられました。平安期の仏像を見た初老の男性が「ホラ、千年もするとこんなに汚くなっちゃうんだよ」とささやいているのを耳にして、うーん、その発想はなかったなあと思いました。
意外に面白いのが後半の近現代の美術品。平櫛田中が彫った太子摂政像には前田青邨が緻密な彩色を施しています。西村公朝の勝鬘夫人と維摩居士の坐像も魅力的です。金堂壁画の模写に関わった安田靫彦や橋本明治らの日本画も佳品揃い。
奉納されたこれら近代絵画の題材を見てゆくと、法隆寺の強みがよく分かります。何よりまず太子信仰。これに加えて世界最古の木造建築を含む伽藍、飛鳥時代の仏像といった文化財がきっちり揃っていること。そしてこれほどのハードとソフトが長く受け継がれているのは、とりもなおさず聖徳太子の「和」の精神が尊ばれてきた証しと言えましょう。