仏報ウォッチリスト

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 ボストン美術館展

東京国立博物館で特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」を見ました。
海外で随一の日本美術コレクションから約90点が一時帰国。仏教美術から絵巻、水墨画、近世絵画と多岐にわたる欲張りな構成。インパクトがあったのは、仏画と曽我蕭白でした。
入場して冒頭が仏画の部屋です。息を呑むほど鮮やかな平安時代の「馬頭観音菩薩像」と「普賢延命菩薩像」。歴史的価値の高い奈良時代の「法華堂根本曼荼羅図」は東大寺法華堂に伝わったものだといい、傷みはあるものの、霊鷲山釈尊が説法する光景が見て取れます。
一方、会場の最後に置かれているのが蕭白の屏風と襖絵の計11点。奔放かつ執拗な描きぶりが圧巻です。ここまで見てきた印象がすべて吹き飛びそう。
そもそもなぜ、国宝級の日本美術品が米国にあるのかというと、明治期に来日した東大教授フェノロサと医師ビゲローが買い求めて持って行ったからです。ただし略奪行為などと単純化するなかれ。明治維新以来、日本人の自国文化に対する関心は薄れていました。廃仏毀釈の惨状などを想像すれば、むしろこれら逸品の命の恩人とも言えます。ちなみにこの調査と収集の後押しをしたのが岡倉天心。一行が法隆寺夢殿の秘仏であった救世観音を見いだしたエピソードはよく知られています。彼らの熱意と審美眼、そして経済力にはただ驚くばかりです。