仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 観世宗家の至宝

大倉集古館で「観世宗家の至宝」を見ました。能楽を大成して以来この業界の中核であり続けてきた観世流宗家の所有品を展示。狭い世界で受け継いできたからこそ今日まで命脈を保ってきた、その証しのような展覧会です。
舞台芸能の魅力が小道具の陳列だけで伝わるはずもないのは百も承知。それでもお能に関する資料に価値があるのは、衣装も面も本物志向だからです。歌舞伎の衣装は歌舞伎役者しか着ませんが、お能将軍様や諸大名が演じることもある、だからこそ最大限に贅をこらしたのだと聞いたことがあります。
能面、扇、文書などが並んでいますが、圧巻はやはり着物の精緻な織り。観衆がこんなに近づいて見つめるなどあり得ないわけで、何もここまでと思うものの、そこは演じる側の心意気と言いましょうか、どこまでも完璧主義を貫く姿勢に驚かされます。
常設展示である普賢菩薩騎象像の隣で、普賢菩薩が登場するお能「江口」の装束を紹介。こういったさりげない機智が素敵です。