仏報ウォッチリスト

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 「井上円了」展

丸善丸の内本店で特別展示「存在の謎に挑む 哲学者・井上円了」を見ました。東洋大学が創立125周年記念事業として所蔵品を展示するものですが、たんに内輪向けの企画ではなく、ふだんあまりなじみのない分野の品々を一般向けに見せてくれます。
主軸は東洋大学創設者である井上円了の紹介。お寺の出身ながら仏教にとどまらず広く哲学思想を探究した成果がその著作などから窺えます。円了は迷信打破のために怪異現象を徹底的に調べ上げました。展示は妖怪を描いた絵巻物など。民衆が何を恐れたかを追求することは、裏を返せば民衆が何を望んできたかを確認することにつながるわけで、決して奇をてらった研究ではなかったことが分かります。
会場にはもう一つのまとまったコレクションとして百人一首が並びます。この収集は円了本人の発案ではないもようですが、和歌がいかに受容されてきたかに注目するあたり、独特のこだわりを感じます。
円了自筆で掲げられた堂々たる書幅が「官々となる金石の声よりも民々と呼ぶ蝉ぞこひしき」。あくまで大衆の側に立つ姿勢にシビレました。