仏報ウォッチリスト

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 「インドへの道」

大倉集古館で特別展「インドへの道 美術が繋いだ日本と印度」を見ました。日印国交樹立60周年を記念して、近代以降に邦人コレクターが請来したインド美術品を展示。館蔵品を中心に、信仰対象から日用品まで種々雑多な混沌とした感じがインドらしくもあります。
館内1階の展示が立体像で、2階が主に平面絵画。像の中心はインド在勤の会社員だった山内利男氏のコレクション89点で、インドの家庭にあるような手のひらサイズの金属製の神像がズラリ。部屋の最奥部にひっそりと自然石のリンガがあり、ほかに石像がいくつか。「悪水牛を倒す女神」という石のレリーフが連続的なリズム感あるデザインで面白く思いました。
2階はまず山内コレクションの細密画。18世紀の作で、宮廷生活の日常風景に神々が登場する場面が描かれています。たとえば豊満なお姫様とクリシュナが向かい合っているといった構図。小さなサイズで、家庭の部屋に飾って日々拝むのでしょうか。
次に高山寺旧蔵「大唐三蔵取経詩話」。南宋後期、中国出版史上最古の時代に臨安で刷られたもので、小さな判型に宋書体の文字が並んでいます。現在の折本形式は後代の補作と思われ、もとは袋綴じか何かでしょうか。
大判の絵画が仏涅槃図と当麻曼荼羅。いずれも経年の劣化があるものの、大事な個所が鮮明に残っています。ことに当麻曼荼羅阿弥陀三尊のお顔と着衣だけクッキリと浮かび上がっていて不思議な雰囲気です。
十六羅漢図から3幅。中国にも類例がないというシンプルな様式で、落ち着いた色の端正な絵です。日本人の近代作品として、今村紫紅のスケッチはこれぞインドという光景を切り取っています。下村観山の維摩黙然図は妙にリアルで目に焼き付きます。
会場には常設展示のおなじみの仏像がいらっしゃることもあって、仏教の香り立つ居心地よい空間でありました。