仏報ウォッチリスト

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 「国宝 大神社展」

東京国立博物館で「国宝 大神社展」(4/9-6/2)を見ました。全国の神社から宝物を借り受けて神道美術の全体像を示す展覧会。祭具や調度品、絵画、文書、神像など200件あまりを展示。
神道というと抽象的な対象を拝んでいるイメージがありますが、実際はかなり人間に近い姿を想定してきたようです。たとえば、社殿にお迎えした神さまをあたかも人が住んでいるようにもてなすため用意された着物や身の回りの品々は、当時の貴族が用いていたものとほぼ同じです。技術の粋を集めた古神宝の数々、太刀の鞘に施された装飾や、装束の意匠に目を奪われます。
展示のクライマックスである40体ほどの神像のお姿も、王朝時代の衣冠束帯を模しています。人間のように喜怒をあらわにする表情も。
ただし胴体の仕上げは仏像と大きく異なります。衣の襞などの写実性は追求せず、丸みを帯びたフォルムで大胆に省略され、一瞬、御像の輪郭に自分の目のピントが合わないような錯覚に陥ります。この世を超えた存在であるという表現の一つなのかもしれません。
かつては神仏習合で仏教と神道に境界はなかった、とよく言われます。たしかに現代と比較すればそういう面が強かったはずですが、こうして純粋な(?)神道美術を取り出してみることで、仏教とは一線を画す努力が絶えずなされてきた事実が改めて思い知らされるのでした。