仏報ウォッチリスト

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 春敬記念書道文庫の書

五島美術館で「日本の名蹟 和様の書の変遷」を見ました。書家・故飯島春敬が蒐集した春敬記念書道文庫から100点。
前項の常盤山文庫は言わば趣味で好きなジャンルを集めたものですが、こちらは古筆研究が目的の幅広さが特徴。正倉院文書から三筆・三跡、伝西行や光悦まで。うち約4分の3が仮名の歌切。前半に写経などの漢字作品。
なんといっても目を引くのは、藤原佐理筆「国申文帖(女車帖)」です。文面は詫び状らしいのですが、引け目をまったく感じさせぬ躍動感。その並びに空海筆「金剛般若経開題断簡」4行。他の断簡を見たことがあると思って調べると、奈良国立博物館に38行(これは「残簡」と呼ばれて国宝)、京都国立博物館に63行など分散しており、83行は関東大震災で焼失とのこと。
仮名はさておき、経典の解説からいくつかメモ。
聖武の「荼毘紙」は白い表面に見える黒いつぶつぶがお釈迦さまの骨粉を漉き込んだもので舶来の紙だと言われてきました。ところが檀(まゆみ)の木を原料とするとこのような仕上がりになり、日本製であると近年分かったそうです。
1人で書くと40年かかるといわれる一切経を23年で成し遂げた藤原定信。早く書くため独特の右肩上がりのきつい文字を生み出したのだと言います。たしかにくせのある書法で、一度見たら忘れられません。しかしどうなんでしょうかね、早書きのお写経って。