仏報ウォッチリスト

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 「曼荼羅展」

根津美術館でコレクション展「曼荼羅展 宇宙は神仏で充満する!」を見ました。
曼荼羅(または曼陀羅とも)の語が指し示すものは幅広いのですが、本展では日本で平安〜室町時代に描かれた密教絵画に限定。そのヴァリエーションを館蔵品だけで見せてくれます。
展示品を大きく分けると、仏界のすべてを描き込んだ見取り図と、その中の一仏をクローズアップしたポートレートの2種。前者の代表が両界曼荼羅で、後者が別尊曼荼羅です。前者の繊細さに目を見張り、後者の力強さにうなります。
歴史的に両界曼荼羅は鎮護国家の修法として、別尊曼荼羅は個人の祈りのために使われてきました。いずれもただ鑑賞する目的で作られたわけではないせいか、相対するだけで何か絵の中に引き込まれるような感覚になります。会場冒頭の大日如来や、半ばの愛染明王など特に。
会場後半には曼荼羅の定義を発展させた浄土曼荼羅垂迹曼荼羅を展示。當麻曼荼羅は絵柄としてなじみがありましたが、その隣の兜率天曼荼羅には驚きました。色遣いを含めまったく別の世界を目の前にして、現実が揺らぐような思いがしました。
曼荼羅は描き方がきっちりと決まっていて、自由に遊べる余地はありません。なのに展示品は一点ごとに違う魅力を発しています。それはもはや技法などでは片付けられない、宗教的な力を秘めているからなのでしょう。