仏報ウォッチリスト

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 「籠太鼓」「半蔀」

宝生能楽堂の銕仙会定期公演で、お能「籠太鼓」「半蔀」を見ました。
「籠太鼓(ろうだいこ)」は狂女を装った主人公が脱獄した夫をかばい、牢に入れられることを夫との形見と繋がれていると喜びます。時を告げる太鼓を叩いて歌ううち、その思いの強さに打たれてお許しが出ます。「極楽の弥陀誓願の誓ひかや 科を助くる憐みの あらありがたのおん慈悲や」と女は言うのですが、はたして仏の救いのおかげなのか。あまり宗教色は感じられず、女の巧みな芝居ゆえの成功との印象が残ります。
「半蔀(はじとみ)」は源氏物語に登場する夕顔の亡霊を慰める話。その女性は物語の登場人物であり、花の精でもあり、はかなさと芯の強そうなところを併せ持ちます。光源氏を夢中にさせ、物の怪に殺されたというそのプロフィルを観る者は知っています。生前の思い出を語りつつも湿っぽくはなりません。蔀の戸を撥ね上げる後見の緊張感にあふれた仕事も見どころ。架空の人物が架空の舞台に現れて消えるというのは、劇中劇ならぬ劇外劇でしょうか。