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仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 山の神仏、チベット他

大阪・京都で展覧会を鑑賞しました。

▼「山の神仏−吉野・熊野・高野」大阪市立美術館
 http://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/deities-of-the-mountains/
ユネスコ世界文化遺産に登録されている紀伊山地の3霊場を、像・画・工芸品で一望。掘り下げ方が深い。吉野は役行者蔵王権現に加えて、子守明神と勝手明神。熊野は諸神像と、三所の本地仏である阿弥陀・薬師・千手観音。高野は弘法大師大日如来と、それに先立つ狩場明神と丹生明神。
その土地特有の信仰を紹介してくれてありがたい内容。とはいえ広範囲ゆえに手薄になる面があるのも否めません。高野では真言宗の根幹をなす両界曼荼羅は扱わず。熊野詣を紹介しつつも伊勢路は言及せず。吉野は桜が話題にのぼりません。展覧会を3館連携で行うという方法もあったはずと思います。

▼「東大寺あべのハルカス美術館
 http://www.aham.jp/exhibition/future/todaiji/
開場記念ということで東大寺宝物の逸品が惜しげもなく揃います。美術面からのアプローチだと天平か鎌倉かどちらかに焦点を絞ることになりますが、本展はそのあたり大らかで近現代の作品まで広く出陳。
見どころは重源・公慶上人像の並座、だと個人的には思うのですが、誕生釈迦仏立像と五劫思惟阿弥陀坐像の人気に霞み気味。これはビジュアル的に致し方ないか。絵画は華厳五十五所絵巻、大仏殿虹梁木曵図など。それと近畿日本鉄道所蔵の江戸時代の奈良名所絵図が珍しい。
ビルの展望を楽しみに来た人がついでに美術館にも寄ったという感じの賑わいで、少し落ち着かないのが難ではありますが、これからどう発展していくか注目。いつか地元の四天王寺特集も希望します。

▼「チベットの仏教世界」龍谷ミュージアム
 http://museum.ryukoku.ac.jp/index.php
20世紀初頭にチベットを訪れた学僧、青木文教と多田等観の功績を顕彰するとともに、彼らがもたらしたチベット仏教の優品を展示。多田の名は知っていましたが、この展示を見なかったら、秘境を目指した物好きぐらいの認識のままであったかもしれません。同館がこのテーマを取りあげるのは、お2人が浄土真宗の僧侶であったからです。当時の仏教界で積極的に世界に目を向けていたのが、後に大谷探検隊を派遣する西本願寺であったことは、もっと知られていいでしょう。
会場で目を引くのが特異な仏像群。密教の影響を受けたその姿はエキゾチックな面貌、とくに縦方向に顔を積み上げた十一面観音は強烈です。
ハイライトはダライラマ13世から多田等観に贈られた「釈尊絵伝」25幅です。仏伝のエピソード120場面が複雑なコマ割りで描かれた鮮やかな絵図。ふつう釈尊の伝記というと前半生――前世から誕生、出家して成道、初転法輪あたりまでが詳しく語られ、以降はあっさりしているのが常ですが、この絵伝は後半生が手厚いのが特徴。といっても印象としてはデーヴァダッタがらみの話題ばかりがやけに多く感じます。最終図は七不退法から涅槃と葬儀まで「ブッダ最後の旅」にほぼ一致するようです。
当時の日本とチベットの仏教僧がどれほどの信頼関係で結ばれていたかが一目瞭然で伝わってくる逸品。その強い絆を言葉で説明するのではなく展示品で納得させるところが、博物館としての面目躍如です。

▼「南山城の古寺巡礼」京都国立博物館
 http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html
山城国の南部、奈良と京都の県境に位置する由緒ある寺々の宝物にスポットを当てた企画。歴史上ともすれば見落としがちな地域。仏像は平安時代の作が多く、おとなしくも整った顔立ちの佳品揃い。活躍した人物としては鎌倉時代の貞慶(海住山寺笠置寺)と室町時代の一休(酬恩庵)。ご両名の袈裟の展示からはなかなか立ち去りがたい思いにさせられます。地元の文化財をきちっと見つめ直し、安易な観光案内に堕することなく見応えある展示に仕上げたのはさすがです。

▼「東寺百合文書 ー地域の記憶とその継承ー」京都文化博物館
 http://www.bunpaku.or.jp/index.html
記憶遺産登録を前に、その価値を紹介する小特集。ポイントを押さえた解説をこの観光案内所ふうなこの施設で行うことに意義があります。文書の現物のみならず、調査票や目録の展示が目新しく興味を惹かれました。