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仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 「三井寺」「熊坂」

お能三井寺」を見ました。4年ぶり2回目。その間に他の物狂能を見てきてここに戻ってみると、いたってシンプルに感じます。感情のみならず、視覚(秋景色)と聴覚(鐘の音)に訴えるのも特徴。
まず清水寺を訪れて夢告を得るという冒頭のワンクッションは何を意味するのか。子供がとてもしっかりとしている印象。小書「無俳之伝」の俳はおかしと読んで、これが付くとアイの一人が省略とのこと。子が女の出身地を尋ねてくれと間接的に僧に依頼し、その返答に思わず直接反応するところが、なんともドラマティックな展開でした。


つづいて「熊坂」を見ました。大盗賊だった熊坂長範の霊を成仏させる話。夢幻能の形式で別の姿を借りて旅の僧に回向を頼みますが、その姿が土地の僧で、つまり僧同士の問答という珍しい光景が展開。当然、詞章には仏教語が満載です。
「……去(さり)ながら仏も、弥陀の利剣や愛染は、方便の弓に矢を矧(は)げ、多聞は鉾を横たへて、悪魔を降伏し、災難を攘(はら)ひ給へり。されば、愛着慈悲心は、逹多が五逆に勝れ、方便の殺生は、菩薩の六度に優れりとか、是を見、彼れを聞、他を是非知らぬ身の行ゑ、迷ふも悟るも心ぞや、されば心の師とはなり、心を師とせざれと、古き言葉に知られたり」
後半は前半とは打って変わって、盗賊が長刀を捌いて最期の闘いを演じます。この悪党にも仏縁があってホッとしました。