仏報ウォッチリスト

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 「東北のオカザリ」

多摩美術大学美術館で、展覧会「東北のオカザリ―神宿りの紙飾り―」を見ました。

福島・宮城・岩手の伝わる切り紙飾りを、現物と写真で紹介。神社の正月飾りが中心。紙飾りは大きく分けて、網飾り・切り透かし・御幣の三つ。とくに網状の細工でめでたい物をつないだ飾りが絢爛。紙を重ねて同じ意匠を複数切り出した飾りは、明かりに照らされると立体的に見えます。切り透かしは平面の切り絵表現で、単純化された絵柄が素朴。御幣というと神棚から垂れる同じ折りを繰り返した紙を想像しますが、神ごとに形が違うのが面白いです。
紙飾りだけでは単調になりそうなところを、東北地方の民俗資料も一緒に展示し、地域信仰の臨場感が増します。刺し子や土人形、一刀彫、かまど神の面まで、素朴な逸品。貼り終えたお札を1万枚以上も納めた俵は、屋根裏で囲炉裏の煙にいぶされて真っ黒に。
展示品に細かい説明はなく、どうしてそういう形になったのかは想像するしかありません。見てすぐわかるのは、鯛が恵比寿、俵が大黒天とつながっていることなど。とにかくおめでたい意匠が大勢を占めます。御幣などは神と人との結界を表すわけですが、魔除より招福の意味合いが強く出ています。
紙というヤワな素材を用いた白一色の表現(まれに赤)の中に、地方の伝統文化の根強さを感じました。