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仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

 「求塚」

宝生能楽堂お能「求塚」を見ました。旅の僧が生田の里で若菜摘みの女から求塚のいわれを聞き、読経で弔うと、くだんの女性が地獄で苦しむ姿を見せます。
前半は三人の若菜摘みの女性がゆるやかに舞ってのどかそのもの。幻想的な光景からやがて過去の悲劇が語られる。二人の男の間で揺れる女、鞘当ての犠牲となった鴛鴦、女は入水し男たちは刺し違える。三人称の語りがやがて一人称になるという説明を後で知り、あらためて謡曲を見て巧みな構成にうなります。
後場、塚の作り物から現れる痩女の面をする女の怖いこと。地獄では獄卒が笞を振り上げ、鉄の鴛鴦がくちばしで頭をつつき、すがりついた柱は火炎を上げる。真っ逆さまに落ちていくと思いきや、一転穏やかな終演は、供養で成仏したことを示すのでしょう。

シテ「ありがたやこの苦しみの隙なきに、御法の声の耳に触れて、大焦熱の煙の中に、晴れ間の少し見ゆるぞや、ありがたや」……
地謡「足上頭下と落つる間は、三年三月を苦しみ果てて、少し苦患の隙かと思へば、鬼も去り火炎も消えて、暗闇となりぬれば、今は火宅に帰らんと、ありつる住みかはいずくぞと、暗さは暗しあなたを尋ね、こなたを求塚いづくやらんと、求め求めたどり行けば、求め得たりや求塚の、草の陰野の露消えて……亡者の影は失せにけり」