仏報ウォッチリスト

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 能「善知鳥」

国立能楽堂お能「善知鳥(うとう)」を見ました。2010年4月に続き2回目の鑑賞。
殺生を生業としていた猟師が死後に遭う責め苦。和歌を元にした善知鳥説話に立山地獄説話を重ねる。とくに鳥の雛だけをおびき寄せて獲っていたことがなじられる。僧の供養によって生前の行いが再現されるというのはお決まりの構図ですが、本作品では舞台に実の妻と息子がいることが、なんとも残酷。お前のしたことを自分の身に置き換えて考えてみよ、と言わんばかり。
「一見卒都婆永離三悪道 この文のごとくんば たとひ拝し申したりとも 永く三悪道をば遁るべし いかに況んやこの身のため 造立供養に預からんをや たとひ紅蓮大紅蓮なりとも 名号智火には消えぬべし 焦熱大焦熱なりとも 法水には勝たじ さりながらこの身は重き罪科の 心はいつかやすかたの 鳥獣を殺しし 衆罪如霜露慧日の 日に照らし給へおん僧」
シテは面を覆うかのようなざんばら髪で表情はうかがえません。なのに体中から滲み出る、どうしようもないやるせなさが伝わってきます。
今回は興福寺勧進能の企画の夜の部。ちなみに昼の部は「俊寛」で、舞台は最北と最南、どちらも救いのない話と解説の先生がおっしゃっていました。