仏報ウォッチリスト

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「水 神秘のかたち」

サントリー美術館で展覧会「水 ―神秘のかたち」を見ました。飲料会社サントリーを持ち上げる企画かくらいに軽く考えていたらとんでもない、テーマ追究の深さに驚きました。
水と信仰との関係——多賀社の湯立、流木で造った長谷寺式十一面観音、サラスヴァティ河を神格化した弁才天、海上交通の守護神だった瀬戸神社、同じく航海神の住吉大社、水分が転じて御子守に、祈雨と善女龍王・摩尼宝珠・孔雀明王、蓬莱山と洲浜、聖地としての四天王寺……。
目に訴える流水文様は、冒頭の銅鐸に始まり、金剛寺日月山水図屏風、春日龍珠箱の内箱外側、応挙青楓瀑布図と繰り返し登場。
圧巻は弁才天コーナーです。江島・竹生島・天川・厳島の四大聖地を挙げ、宇賀神を皮切りに蛇体の天川弁才天曼荼羅も異様。高野四社明神図の次に和歌山県博で木型と共に拝見した女神坐像。
羽黒山御手洗池から600面出土した鏡2面は絵柄が左右対称ではない和鏡。
定智筆善女龍王像は意外にも大きな図でした。印刷で見るとどうも前のめりでバランスが悪く、軸装するときに切ってしまったのではないかとも思っていたのですが、現物を見るとこの構図できっちりまとまっていました。印刷だと足元がボケていて立ち姿の力点が想像できないからかもしれません。
蓬莱や菊水といった文様の入った工芸品は、同美術館の得意分野です。数年前に拝見した谷文晁の石山寺縁起絵巻がこういう応用形で出てくるのかと感激。
サントリー美術館と、巡回先の龍谷ミュージアムの所蔵品が多いのは当然ですが、もう一館、神奈川県立金沢文庫の協力も大きいと思います。瀬戸神社や龍華寺の作品は同文庫の展示で拝見していますし、要所に称名寺聖教が配されて解説に一役。請雨経法道場指図には使う道具を青で揃えるため赤色の物は入るべからずと書かれていると。貴重な証言です。
これは展示替え後の後期も来なければ。(と思いつつもかなわず。追記)
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2015_6/display.html