仏報ウォッチリスト

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「浮世絵ねこづくし」

そごう美術館で展覧会「あそぶ浮世絵 ねこづくし」を見ました。平木浮世絵財団の所蔵品から、猫が登場する浮世絵約140点。まったく通りすがりの時間つぶしで入ったのですが、徹底した猫しばりの企画は楽しめました。
役者絵でたぶん本人そっくりに似せてあり、加えて演じる役柄が一目で分かるように描かれていながら、しかも顔が猫って、超高度に計算された絵だと思います。
人物を戯画化して顔と手足が猫、なのに着物を着た姿が違和感ありません。温泉のシーンなど、着物を着た猫と裸の猫が同じ絵の中に難なく収まっているのが不思議です。猫柄の着物というのも大胆でした。
仏教がらみでは、国芳十六羅漢をもじった「十六利勘」というシリーズがあって朝寝者損者みたいなからかいの対象としています。「於竹大日如来」は犬猫と共に描かれることが多いとか。「西行法師」は源頼朝から賜った銀製の猫をそのへんの子供に与えてしまったシーンを描いています。
「八代目市川団十郎死絵(しにえ)」2枚のうち1枚目は地獄の使者に連れて行かれる役者にすがりつく贔屓筋たち。2枚目は涅槃図の構図を借り、中央の寝台に頭北面西で横たわる役者を取り囲んで泣き、手前には猫。涅槃図には動物たちが釈尊の死に寄り添ったことになっていますが、古来の様式では猫だけは描かないのがお約束になっています。理由はお釈迦さまの使いである鼠の天敵だからなど諸説あり。ところがこの死絵に猫だけが描かれるというのは、涅槃図の決まり事を知っていてわざとそうしているのでしょうか。
ちょっと離れて眺めても目立つ猫たち、決して脇役に収まってはいられない存在感に感服しました。

https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/archives/16/nekodukushi/index.html