仏報ウォッチリスト

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 「インドの仏」

東京国立博物館で特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」を見ました。展示品は多すぎず少なすぎず堅実な内容で、見たまま素直に受けとめられました。
「インドの」というからには「中国の」「日本の」と対比しているのかというと、そう小難しいわけではなく、仏教の、あるいは仏像のスタンダードを大づかみに見せてくれます。まず仏像以前に礼拝対象が法輪や菩提樹だったことを示すレリーフ。これがなんと紀元前2世紀。続いて仏の生涯をワンシーンずつ見せる石彫。人物に躍動感があって見応えがあります。仏伝の中で「従三十三天降下」というエピソードは日本ではあまり馴染みがない気がします。
仏像は坐って説法をするお姿が主流。マトゥラー仏とガンダーラ仏の素材や衣の表現の違いも明らか。肩から焔が上がる表現は珍しい。菩薩像になると密教めいてきます。多数の仏塔を背景とする塼仏からはいかにストゥーパが大事かが伝わってきます。
経典が3種。教えよりもそこに出てくるキャラクターの解説。かなりくだけた展示で親近感は湧きますが、例えば使用文字や読まれるときの様子なども知りたいと思いました。附編としてミャンマーの作品が紹介されるのは、インドで仏教が滅んだ後を補足するためでしょうか。
たとえば原始仏教から大乗仏教への変遷とか、広いインドの地域差や王朝別の特徴などは詳しくは述べられません。ブッダ在世時からの長い流れをまとめるにはこれでも致し方ない面もあります。それでも日ごろ日本の宗派別の仏教の説明に慣れていると、こうした大らかさがとても心地よく感じられもするのでした。