仏報ウォッチリスト

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 「天台仏教への道」

MIHO MUSEUMで「神仏います近江 天台仏教への道 永遠の釈迦を求めて」を見ました。3館連携特別展の1つで、副題のとおりインド仏教から伝教大師最澄までを辿る企画です。
仏教概論をざっくりとビジュアル化した感じ。同館の収蔵品に滋賀県内の宝物を加えて立案すると、こういう壮大な見取り図が描けるのですね。駆け足ではありますが、釈尊の教えが比叡山に直結していると実感できます。
ただ、天台教学の背景には法華経がある、浄土思想がある、薬師信仰がある、密教があると枝葉を広げてゆくうちに、収拾がつかなくなってしまった感じも否めません。そのせいで最澄本人に直接関わる作品が極端に少なく、現在は伝教大師坐像1体のみ。会期後半に「天台法華宗年分学生式」が出て、直筆はこれ1点だけ。なんとも寂しいかぎりです。
展示で興味深かった点が3つ。1つ目は法華経最澄の間に聖徳太子を置いていること。庶民の太子信仰はもっと後代のことだと思いますが、天台仏教は中国経由と単純化しない視点は大事だと思います。
2つ目は、薬師如来の立像が衣の裾を持ち上げているしぐさ。なんでも最澄が中国の師・道邃から授かった像が規範になっているとか。
3つ目は、宣伝物にも載っている善勝寺千手観音立像の魅力。パーツごとに眺めると顔は幅広、頭頂や側面の化仏がやたら大きく、前傾姿勢で不安定など、アンバランスなところばかり目につくのですが、全体として捉えるとこなれて落ち着いて見えるのが不思議です。
個々の作品に説明文がなくて、この書画や図像がここに置かれている意図をしばしば考え込みました。でも、来場者は近隣からの団体と外国人客が大半で、「ええお顔してはるなあ」「オーワンダフル」という感じでたちまち通り過ぎて行きますから、まあこれはこれでいいのかなと受けとめておきます。