仏報ウォッチリスト

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「仙厓ワールド」

永青文庫の展覧会「仙厓ワールド -来て見て笑って!仙厓さんのゆるカワ絵画-」(10/15~1/29)全4期を鑑賞して、ごほうびに禅画ポストカードセットを頂戴しました。なんと太っ腹な記念品。カードの絵柄は内緒です。
同文庫の仙厓コレクション全100余点を4期に分けて展示する企画。作品はまったくハズレなし。同じモチーフの書画をうまく振り分けてどの期も一定の水準が保たれていました。もし一度に見せられたら途中でダレていたでしょうし、似た作品の優劣を競う展示になってしまったかもしれませんから、4分割しての展示は正解です。
永青文庫所蔵の仙厓作品は、同館の「禅僧の書画」展(2011年春)後期に5点ほど、羽田空港ディスカバリーミュージアム「禅・仙厓」(2013〜2014年冬)前・後期で20点くらい見ていました。しかしまだまだこんなにあったとは驚きです。

出光美術館の仙厓展は毎度おなじみの作品に会いに行くという感じですが、当展は初めて拝見する作品が大半という、二度と味わえない貴重な体験でした。せっかくですからなるべくタイトルを見る前に絵を眺めるようにすると、静物でも人物でも、何を描いた絵なのかが一目でほぼ分かります。即興で適当に描いているように見えて、実はすぐれたデッサンと構成力に裏打ちされているからでしょう。ちなみに一目見てどうしても分からなかった絵は、花火と茄子だけでした。あと羅生門もかな。
何を描いているかが分かっても、何を言わんとしているかまで理解するのは難しいのが禅画です。たとえばなぜ僧侶が殴り合っているのか。そこで解説文を一読すると、故事や禅問答の内容を簡潔に教えてくれます。読んでから絵をもう一度見直して、ああってなるのがまた楽しい瞬間です。出光美術館もそうですが、仙厓作品の解説パネルを読むと思わず、いいね!ボタンを探したくなります。

昨秋の出光展は絵がメインだったせいで書の作品が展示されませんでした。今回は達筆な書を数多く見ることができたのが大きな収穫です。各期共、会場をぐるっと回って最後に展示されているのが、ゆるくない一行書。とりわけ第1期の「本来無一物」には心底シビれました。第4期の一行書には「佛之写善不欽聞」とあって、解説によると脱字があるらしく文意がとりにくいのですが、冒頭の佛1字だけでも味があって見飽きません。硬軟の書画が混在しているところに仙厓の魅力があるといえます。
永青文庫さんにはいっそ仙厓コーナーを常設にしてほしいものです。出光のルオー常設室の向こうを張って。仙厓といわず禅画の間でもいいです。部屋は建物内にたくさんあるようですから。

蛇足ながら、本展は個人的にここ1年間で最良の展覧会と言っても過言ではないのですが、このような年をまたいだ展覧会はどうしても年間ベストテンみたいなまとめから脱落しがちです。そもそも多くのミュージアムは年度末にならないと来期のスケジュールを発表しないわけですから、12月に「今年見た」「来年見るべき」で展覧会をくくるのはどうなのかなと思います。

永青文庫 http://www.eiseibunko.com/exhibition.html