仏報ウォッチリスト

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 12月の歌舞伎座

休日中に歌舞伎座十二月大歌舞伎」を見に行ってきました。今月は予定が立たなかったためもともとチケットを買わず。用事の前を見計らって、昼の部最初の演し物の一幕見。
『嫗山姥(こもちやまんば)』は、昔語りとか当てこすりとか仇討ちとか切腹とか、およそ仏教的でない要素がたっぷり詰まっています。菊之助は主役の元傾城・八重桐というより、同じ舞台に出ている赤姫の役どころじゃないのと思っていたら、なかなか堂々としたもので意外に楽しみました。原作は近松門左衛門浄瑠璃で後半は立ち回りがあり、そこで超人的な強さを示す八重桐がのちに産む子が実は坂田金時という設定。そんな未来のお約束をこの会場にいる皆が知っているというのが歌舞伎鑑賞の面白さです。
これに気を良くして、昼の用件を済ませた後、また東銀座へ向かい、夜の部最初の『神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)』を一幕見。
こちらの菊之助はういういしい娘のお舟ではまり役。富十郎のグロテスクな頓兵衛が出て、これがお舟の父とはと衝撃が走り、そこからドラマが走り出します。原作が平賀源内(!)で、前半は「すし屋」の趣向と言われるとそんな気もするし、クライマックスは「八百屋お七」でどこかで見たような、っていうか、そもそも実際にいつぞや見たはずなのですが、このご両人がインパクトあり過ぎで過去の記憶は消し飛びました。なお、渡辺保センセイがこの舞台をべた褒めしています。
12月の歌舞伎界は京都南座の顔見世が中心で、東京のほうは昼の『芝浜』みたいなので和むのが常道ですが、チケットを押さえ損ねた怪我の功名で興味深い舞台を拝見することができました。