出光美術館で展覧会「水墨画の輝き」(5/31まで)を見ました。副題に「雪舟・等伯から鉄斎まで」とあるとおり、室町〜江戸〜大正期の墨一色で描かれた絵画を一望。これを自前のコレクションだけでやってのけるのですから恐れ入ります。
さもありそうな風景を誇張して描く山水画、大胆な省略で見せる花鳥画、深いメッセージを即興的に伝える禅画。水墨の濃淡だけで、やりなおしの効かない線を引く。コンピュータ全盛の時代が忘却してしまった表現です。
添えられた解説が懇切で、展示構成の意図がよく分かります。丹念にたどると専門用語も身に付きます。おかげで「破墨」「溌墨」「楷体山水」「逸格」「外暈」「骨法用筆」「没骨法」「皴法」「藁筆」「水筆」「米点」といった言葉を、実例とともに知りました。
仏教関連をモチーフとする作品としては、
- 仙がい「狗子画賛」 子犬の背の緊張感ある線に注意を促す解説に、なるほどと思いました。かわいいとだけ見てしまいがちな絵ですが、出典は禅の公案ですからね。
- そのほか、三阿弥と呼ばれる作家たちの作品が紹介されています。阿弥号は仏教由来。三阿弥とは能阿弥・芸阿弥・相阿弥で、室町将軍家代々の美術コレクションである東山御物(ごもつ)を三代にわたり管理した人たちです。
長谷川等伯の虎、狩野探幽の小鳥、その存在感に息を呑みました。水墨画というのは意外にも動植物の命を際立たせる表現だと思いました。