仏報ウォッチリスト

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 芭蕉展を見た

出光美術館で「芭蕉 〈奥の細道〉からの贈りもの」展(10/18まで)を見ました。
松尾芭蕉の書を書風の違いで三期に分けて見る趣向。「奥の細道」を旅した頃が最も優美な第二期で、この時期の真跡を中心とした展示構成。たしかに平安の仮名書にも劣らぬ華麗な書きぶり。
となるとがぜん気になるのは、なぜ書風が変わったのかということです。しかしそれを特定するのは謎の多き生涯ゆえどうにも困難なよう。ただ芭蕉が私信の書体を使い分けていたふしがあるのを示唆する展示もあり、書風の変遷は意図的なものなのかもしれません。
最終コーナーではあくまで推測という扱いで、芭蕉が「大師流」を学んでいたのではないかという興味深い考察があります。芭蕉が格別に敬意を払う僧侶と言えば、漂泊の歌僧・西行と、同時代の直接の師匠である禅僧・仏頂。そこに弘法大師空海の影響が加わるとなると、芭蕉の魅力がさらにぐっと広がる思いがします。
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同展の隣室では併設「仙がい展」(※がいの漢字は崖の山のない字)。仙がいさんは芭蕉より1世紀あとの人で、かなり芭蕉に私淑していたらしい。なにせ展示の冒頭から「芭蕉翁」と大書した一行書ですもの。
俳聖にあやかり、こちらの展示も五七五を詠み込んだ作品が30点あまり。「切れ縄に口はなけれど朧月」とか「楽しみは花の下より鼻の下」とか。同じ賛文の作品が複数あるあたり、求めに応じて同じテーマをリピートしていたことがわかります。
今回インパクトを感じたのは「百老画賛」。無数の老人が正面を向いて描かれていて〈百人の死(しに)そこないや明(あけ)の春〉。これはめでたい。