仏報ウォッチリスト

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 法然と親鸞を見た

青山劇場で前進座特別公演『法然親鸞』を見ました。
幼少の法然上人が父親を失うシーンから、親鸞聖人が関東での伝道に区切りをつけ都に旅立つまで、ほぼ史実とみられるエピソードをたどる正味3時間の舞台。
二人の祖師の遺した言葉をちりばめつつ、本願も念仏も仏教さえよく知らぬ人にでも抵抗なく受けとめられる親切な構成。役者が巧いから全編たるみがありません。
法然上人のあたたかさと親鸞聖人のやわらかさ。エキセントリックなところは一つもなく、親しみのわく人物像です。脇役も熊谷直実や性信らが印象的。でも、誰より光っているのが恵信尼でしょう。
親鸞聖人は流罪となった越後で恵信尼と会って結婚したというのが一般的な理解ですが、最近の研究によると恵信尼は京都の高貴な家系の出身とみられるのだとか。物語ではそこを押し進めて、恵信尼法然門下ですでに念仏の教えを聞いていて、師弟の仲を取り持ったとしています。恵信尼が教養人であることは、たとえば薬草の知識で村民に一目置かれるような場面でさりげなく描かれます。
ポイントは『法然親鸞』の「と」にあると思います。つまり単に浄土宗と浄土真宗の開祖を順に見せるだけの趣向ではなく、劇中では常に法然親鸞の思想が一体である、これを象徴するのが「と」であり、両者を結び付けている恵信尼こそがその「と」であるわけです。
舞台では混乱の時代を背景に「対決」のシーンが何度も登場します。対立をよしとせぬ念仏者がいかにその場を切り抜けるかが大きな見どころです。
なお、会場で販売している公演プログラムが、そんじょそこらの仏教雑誌よりもよっぽど豪華な執筆陣で恐れ入りました。役者紹介は別として、仏教関連の欄のタイトルと執筆者を以下に抜粋しておきます。
 〔推薦のことば〕里見法雄、橘正信、安原晃、豊原大成、沼田智秀
 「還愚の人法然」石上善應
 「親鸞と現代世界の深淵」高史明
 「親鸞聖人と恵信尼山崎龍
 「日本仏教史に輝く巨星」ひろさちや