岩波文庫『ブッダ最後の旅 大パリニッバーナ経』(中村元翻訳)が今春、改版して再発売されました。内容そのまま組版し直し、字面はシャープになりました。
ところが、ひとつ注意すべき点があります。文字の組み方が若干変わった影響で、旧版とは物理的なズレが生じているのです。
以下に、相違点をまとめます。
■『ブッダ最後の旅』体裁上の相違点
旧版 | 新版 | ||
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発行年月日 | 1980年6月16日 | 2010年4月21日 | |
刷 数 | 第1刷 | 第42刷改版 | |
総頁数 | 328頁 | 372頁 | 奥付の裏面まで。広告頁は除く |
定 価 | 500円 | 900円+税 | 旧は奥付、新はカバーに表記 |
文字サイズ | 7.5ポ | 8ポ | 手元の写植スケールで計測 |
1行の字詰 | 43字 | 39字 | 本文は全行1字下げ |
1頁の行数 | 15行 | 15行 | 行間のアキは0.5ポ狭く |
要は、本文文字のサイズが大きくなった→1行に入る字数が減った→行の増える段落が生じた、というわけです。これでどのくらいズレるかというと、第一章の開始時点は同じ、第二章もかろうじてノンブルは一緒なのに、第三章の冒頭で2頁、第四章で6頁違ってくるといったぐあい。
つまり、かりに講義か何かで各自がテキストを持参したとすると新旧の本が混在するおそれがあり、そうなると「何ページの何行目」と言っても通じないわけです。関係者の方々はどうぞお気をつけくださいませ。
そうなると次に気になるのは、本文自体に改変がないのかということ。こればっかりは新旧のテキストを照らし合わせるしかないので、ぼちぼち確認して、見つけしだいご報告します。
〔追記〕その後、両書を照合しはじめたところ、冒頭の数頁は文言自体の違いがまったくありません。改版において本文の異同はないらしいということをとりあえずの結論としまして、もしも特記事項があれば改めてご報告します。……余談ですけど、ほとんど同じ組版で4字ずつズレていく文章を見比べるのって、ややこしすぎてなかなか集中が続きません。効率的に校正をするなら字詰めが同じか、あるいはいっそ手書きと活字みたいにまったく違っていたほうがありがたいと思いました。(7/7)
補足1)
念のため申し添えておきますと、本項はあくまで便宜的な比較のメモです。決して同商品の価値を貶めるつもりはございません。今回の改版発売は喜ばしく受けとめています。
補足2)
現在、私の手元には上記2冊のほかに、同文庫「1989年2月10日第9刷」と、同ワイド版「2005年4月5日第2刷」があります。前者は上記旧版と寸分違わぬ内容。後者のワイド版は同じく旧版を目伸ばししたものですので、比較対象からは外しました。