仏報ウォッチリスト

ここは仏教の最新情報、略して《仏報》の材料をとりあえず放りこんでおく倉庫です。

「書の流儀」

出光美術館で「文字の力・書のチカラⅢ 書の流儀」を見ました。
第1章は書の多彩な表現を主に仏教関連の作品で提示。奈良時代薬師寺経に見える楷書の歴史。理趣経種字曼荼羅の絵画的な遊戯。日課念仏のリズム感。明恵筆消息の即興的な字を見ればその内容を読み取りたいと思わずにはいられません。ここまでだけで、ひとくちに書の鑑賞といってもいかに見方が多様で、見る側が作品によって意識の切り替えを行なっているかがわかります。
第2章は頼山陽とその書風を慕った人たちの作品の対比。タイトルの「流儀」とはここらを指すのでしょう。
第3章は墨跡。前章から目を転換。〈墨跡については、元来、巧拙を問うことはなく、ほぼ人物の歴史的評価を保証とした評論や解説になっていることもその証だろう。つまり、墨跡は書家の手がける作品の対極にあることになる〉(図録解説)。好き勝手に書いているように見えて、一貫する何かがあります。それは禅味といえばいいのでしょうか。厳めしい一行書と、ユルい禅画を貫くもの。かすれも魅力のひとつ。伝尊円親王のあざやかな鏡文字と逆さ文字にうなります。
第4章は仮名古筆、第5章は伏見天皇、第6章は本阿弥光悦松花堂昭乗。なるほど継承されてゆく書というのはこういうものかという見本のオンパレード。流儀に忠実といっても決して没個性ではなく、かえって主張が浮かび上がってくるところに味わいを感じました。