仏報ウォッチリスト

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お能「熊野」「恋重荷」

矢来能楽堂の「花乃公案」公演で、お能「熊野(ゆや)」と「恋重荷(こいのおもに)」を見ました。
「熊野」は3回目。在原業平の歌を引くので伊勢物語かと思っていたら、作品のネタ元は平家物語と今回初めて知る。最初に見たときに親か夫かで翻弄される切ない物語に心を打たれたが、さまざまな形式の作品を見てきた今となっては、現在形の進行がやや物足りなく思えます。願いがかなうのが「あら嬉しや尊(とうと)やな。これ(清水の)観音の後利生なり」と理由づけるのは御都合主義すぎやしないでしょうか。
「恋重荷」は初見。タイトルそのままの重荷が作リ物として登場、後見さんが重そうに持ってきてビビりました。話は単純でかなわぬ恋が破れるという骨格で誰にでもわかるのですが、鑑賞教室で取り上げられるような内容ではありません。老いらくの、身分不相応の恋心と、見せしめの公開処刑、恨んで当たり散らし、それでも最後は女を守護すると誓うものの、どこまで信じてよいやら。衝撃の問題作です。
「恋よ恋われ中空(なかぞら)になすな恋、恋には人の死なぬものかは、無慚の者の心やな」