仏報ウォッチリスト

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 西行の仮名を見た

出光美術館で展覧会「西行の仮名」(3/30まで)を見てきました。
たいそうにぎわっています。かな書道の愛好者なのでしょうか、あるいは西行法師のファンなのか。その双方を、書作品と物語絵巻とで満足させてくれる充実した内容です。
現存する西行の真跡はたった5点とか。同展にはそのうち2つが出ています。当然これが目玉……と思うでしょ? ところがところが。
世の中には「伝西行筆」とされる作品が山ほどあります。そうした筆跡を、疑いのまなざしで見るのではなく、逆にそれぞれの個性を探ろうというのが同展のミソ。大胆な推理を解説したパネルに引き込まれました。結果的に真筆のほうは「伝」を見るための基準作例というか単なる比較対象に位置づけられていて、そこだけ大行列にさせないところが、企画として巧い!
仏教的なことを付け加えておきます。あ、西行はお坊さんです。いやそれはともかく。
出品されている真筆の一つが国宝「一品経和歌懐紙」(=いっぽんぎょうわかがいし。京都国立博物館蔵)。会場の解説文によると、これは〈法華経二十八品の各品の経旨を題として和歌を詠んだもの〉で〈一人が一品ずつを、故人の供養を目的として、または、文芸的な目的の歌会で〉頻繁に編まれ、〈一首目に法華経の各品を題とした和歌を、二首目には「述懐」と題した和歌を詠む〉のが定型だそうです。
この展示品も元は28枚か30枚で一揃いだったはずが、現存しているのは14枚。そのなかの1つに西行(署名は法名の「円位」)の筆跡があるものだから、珍重されているわけ。西行が「薬草喩品」を受け持った部分だけを単独に軸装していて、残りの13枚は横1列につなげられています。
その西行の歌を書き写します。濁点がないのと字切りは原文ママ。ヒントは「三草二木」です。

ふたつなくみつなきのりの
あめなれといつゝのうるひあまね
かりけり

わたつうみのふかきちかひにたの
みあれはかのきしへにも
わたらさらめや